昨今、企業は面接の時に個性的な人材を発掘しようとあの手この手で必死のようです。面接される方もいかに個性的な体験をしたか一生懸命アピール。そんな話を良く聞きます。
==========
個性的と言えば忘れられないのが小学校3年生の時に同級だったI君。
I君はなんとなく馬が合いました。隣の席だったこともあります。
I君は楳図かずおの大ファンで、「漂流教室」や「まことちゃん」などを全巻揃えており、ノートにはどのページも楳図かずお風の恐ろしい絵が沢山描いてありました。下ネタも大好きで「う○こカレー」とか「ゲ○お好み焼き」などのコンテンツも沢山描かれていました。教科書の挿絵はすべて加筆され、どれも夢に出てきそうなほど怖い挿絵に変わり果てていました。遠足の日にはなぜか「とても怖い心霊写真集」を持ってきていたのをよく憶えています。
中3の時に再び同じクラスになったのですが、相変わらず恐ろしい絵を描きまくっていて、なんとも言えない感動を憶えてしまったことが今でも忘れられません。
==========
アップルに勤めていた時に私の部下だったBさんも相当に個性的でした。
Bさんは私より20ほども年上で、創業当時から勤めている超古株でした。創業者ウアズ二アック氏の友人。このBさん、些細なことで腹をたて、相手かまわず怒鳴り散らし、細かい事にこだわり、協調性はまるでゼロ。趣味はレゴで、給与の大半をレゴにつぎ込み、家のガレージがレゴだらけでクルマが入らない有様でした。在職中からレゴクラブを設立し、レゴの展示会とかコンベンションをやっています。
==========
またアップル時代にご一緒させて頂いたTさん。あまりに自分流のやり方にこだわった挙げ句、会社をヤメさせられてしまいました。なにか曲げられない信念があるらしく絶対に仕事のやり方を変えようとしませんでした。ああ言えばこう言うで説得不可能。絶対に一緒に仕事をしたくない方でした。
==========
日本企業が本当に個性的な人を欲しているなんて私には到底思えません。本当に個性的な方々はどの人も使いづらく、凡人には理解し難く、また個性の方向が仕事に役立つとは限らないのです。
Bさんのレゴへの情熱がアップルの仕事で生かされることはありませんでした。でも彼がいることで、シリコンバレーのレゴ野郎たちは毎年楽しいコンベンションに出席したり、自分の自慢の作品を見せびらかす機会ができたわけです。
Iくんは漫画家になったか、あるいはただの不気味な中年のおっさんになったのか、その後音信不通なので私には分かりません。でも彼の情熱は不気味な絵を描くことで、断じて勉強などではありませんでした。きっと自分の生きやすい場所を見つけているのではないかと思います。
Tさんはホームページ開発会社を興したとか聞いています。その後は不明。
==========
この3人の個性的な面々に共通しているのは、自分の欲望に正直に従い、自己実現をしている点です。私なんて周囲の期待に応えようと必死で、分かりやすい出世をしましたが、自己実現とは真逆の方向に向かっていました。
私は在職中、要領が悪くて自分勝手で口が悪くて怠け者という、本当の自分のキャラが自分でもどうしても受け入れられず、世間や両親が受け入れてくれそうな勤勉善良キャラを一生懸命演じていたのです。
本来の自分から乖離した生き方をするとけっこう息苦しいものです。私の親は多分大満足だったでしょう。でも、私自身はいつも疲れ果てていました。
==========
「キャリアポルノは人生の無駄だ」(谷本真由美著)を読んでみたら、このおかしな3人の古い友人のことを思い出しました。そして息苦しかったアップル時代。
自己啓発本なんて読むことないし、凄い人にならなくてもいいし、仕事だけが自己実現の場じゃありません。自己実現はラジコンでもレゴでも不気味な絵でも、自分がやりたいように自分のペースで仕事する、でもいいんじゃないでしょうか?
仕事で自己実現できる人生なんて、多分稀です。そして人生は一度きり。人の期待値に沿えなくても、変態でもアホでも人付き合いが悪くても、まっさらな自分の姿を受け入れてしまったほうがずっと楽です。
天上天下唯我独尊。
自分は自分しか居ないだしね。で、その上で自分なりに生きやすい形を考えていく。多分それが楽でハッピーな生き方です。
PS.献本ありがとうございます。とっても面白かったです!
0 件のコメント:
コメントを投稿