それからしばらくのこと。親友からアルバイト中のカイラへと電話がかかってきたのです。彼女はその内容に愕然としました。「Is Anyone Up? 」というウエブサイトに、カイラの乳首が露出した写真が載っているというのです。家に帰ってサイトを確認した彼女は、その場で泣き崩れました。
復讐ポルノ
「リベンジ・ポルノ」とは、元恋人への復讐を目的としてネットに投稿されたわいせつ画像の総称です。現在、アメリカではこういった投稿を掲載する復讐ポルノ・サイトが乱立している状態なのです。
ハンター・ムーア氏が2010年にサイトを設立した「Is Anyone Up? 」はそんな復讐ポルノ・サイトの草分け的存在でした。このサイトは月に3000万ヒットものPVを集め、ムーアはこのサイトから月13、000〜30、000ドル(130〜300万円相当)の収入を得ていたのです。サイトの大半は女性のイメージで占められており、まずは衣服を着ている普通のイメージを表示。そして写真をクリックすると、ヌード写真が表示されるようになっていました。本名、居住地、そして本人のFacebookやTwitterの自己紹介ページへのリンク(!)が貼られていたのです。
復讐サイトへの「復讐」
カイラは母に相談。母親が写真を落としてくれるようムーア氏にお願いしたものの、完全に無視されました。地元警察に訴え出ても「自業自得」と、取り合ってくれない始末です。
しかしカイラにとってラッキーだったこと、それは彼女の母が元探偵であったことと、父が弁護士だったことです。母親は早速調査を開始しました。そして驚くような事実を次々と発見したのです。
まずはムーア氏自身について:
・「人生破壊のプロ」(Professional Life Ruiner )を自認。
・被害女性から苦情を受けると、「自殺でもしろ」と返事。
・Twitterで10万人以上のフォロワーあり。
・被害者が苦情を寄せると、これらフォロワーが被害者の職場に電話などをして攻撃。
投稿されている写真について:
・およそ10パーセントの写真は女性自らが投稿したもの
・半数近くが、ハッキングによって盗まれた写真が投稿されたもの
・別の女性のヌード写真の首から上からをすげ替えたコラージュ画像が多数あること
などといった実態が判ってきました。
つまり、写真の半数近くが、本人も元恋人もまったく関与しないカタチで、何者かによって勝手に投稿されたものだったのです。
さらに、このサイトが取り締まられない原因や被害状況なども判ってきました。
・わいせつ画像をホストすること自体は罪にならない〜米国の通信品位法は他人が制作したコンテンツによって罰が科せられることを禁じている
・訴訟は高額なため、被害者は泣き寝入り
・わいせつ画像を見られたことを苦に、転職や引っ越した女性多数
闘い
もしも写真がすべて元恋人か本人によって投稿されたものであれば、FBIとて、ムーア氏を調査することはできません。ところが、ハッキングによって集められた投稿が多数あるということであれば話は変ります。カイラの母は、調査ファイルの厚みが20センチにも及ぶ頃、FBIに訴え出たのです。FBIは入念に調査した上、ムーア氏の家宅捜索を実行しました。
FBIの家宅捜索に腹を立てたムーア氏は、やがて、カイラの両親がFBIに通告したことを知るに至りました。すると、両親の家に脅迫電話やコンピュータウイルスなどが送られてくるようになったのです。そこでカイラの母は、ムーア氏の現住所をTwitterで流すことで反撃しました。すると脅迫はさらに増えたのです。
しかし、母はそこで止らず、フェイスブックに協力を要請。ムーア氏のアカウントを凍結に漕ぎつけたのです。またPaypalにも協力を要請。ムーア氏のアカウントは凍結され、彼は「Is Anyone Up? 」から収入を得る手段を絶たれたのです。
するとムーア氏は更にパワーアップしたサイトをオープンすると公言。今度のサイトには、被害者の現住所、ならびに家までの道順さえも載せるとアナウンスしたのです。
協力
そんなある日、カイラの母の元に一通の電話がかかってきました。その電話の主は「アノニマス」というサイバーテロ組織を名乗ったのです。そしてカイラの母に協力を申し出ました。
アノニマスは「Is Anyone Up? 」をホストするサーバに総攻撃を仕掛けました。さらにムーア氏の個人情報をハックし、すべてネットに流出。ここに至り、ムーア氏はサイトを閉鎖し、自身も沈黙するに至ったのです。
その後
その後カイラの両親はカリフォルニア議会に働きかけ、復讐ポルノを禁止する法律が制定されました。この法律は、「他人を傷付ける意図で画像その他の情報を配布することを禁止する」というものす。全米を先駆けたため、大きな注目を集めました。
アメリカで流行したことの多くは大抵日本に飛び火しますから、日本も深刻な被害が起きる前に、法整備を急いだほうがよいでしょう。また付き合い始めの段階で、「撮影はダメ」と相手に釘を刺す必要もあるでしょう。それに応じてくれない男性とは付き合わないほうが無難かも知れません。一度ネットにアップされた画像は永久に漂い続けるのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿