最近アメリカ各地で、人間が野生の七面鳥に襲われる事件が相次いでいます。Youtubeで「Wild Turkey Attack」と検索すると、ビックリするほど沢山のビデオが出てきます。いったいなぜこのような事件が多発しているのでしょうか?
「トム・ザ・ターキー」
マサチューセッツ州チルマークに住むジョナサンは、ある日、家の近くで見かけた七面鳥の小鳥に愛着を憶え、餌を与え始めました。彼はその七面鳥を「トム」と名付け、見る度に餌を与え続けたのです。
時が経つにつれ、トムはとびきり大きく獰猛な七面鳥へと成長しました。小さな頃から人間に餌を与えられたこともあって、トムは人間を恐れたりしませんでした。七面鳥の群れのリーダーとなったトムは、他の七面鳥12羽と徒党を組んで、チルマークの町を我が物顔で練り歩くようになったのです。
やがてトムたちは人を襲うようになりました。老人も子供も男も女もみんな例外なく襲われました。人々は玄関の真正面までクルマで乗り付け、七面鳥たちに襲われないよう最短距離で家の中に駆け込むようになりました。ある人はクルマをつっつく七面鳥をドアで殴りつけ、やっとの思いで家に駆け込み、ある人はゴルフクラブを持ち歩いたのです。家を七面鳥の群れに囲まれた人もいました。宅配便の運転手は玄関まで荷物を届けず、トラックから投げ捨てると立ち去るようになりました。人々は隣の家に行く時ですら、犬を連れて行くようになったのです。トムたちはそれほどにまで凶暴でした。そして、七面鳥に襲われないのは、ジョナサンと、彼の妻だけだったのです。
七面鳥に襲われるってちょっとどんな感じか想像がつかなかったので、ここでビデオを掲載。子どもの頃、野良犬に追いかけられて半泣きで帰ったのを思い出しました。こんなのが13羽で群れって、いったいどんな感じなのでしょうか?
銃声
2008年の6月のある日のこと。アリサさんとアルティノさんは、ベビー用品の配達にチルマークへとやってきました。アルティノさんが配達の品物を持って配達先の家に歩いていくと、近くにいた大きな七面鳥が突如アルティノさんに襲いかかりました。クルマで待っていたアリサさんが警察に通報。七面鳥は駆けつけた警察官によって射殺されました。そう、殺された七面鳥はトムだったのです。
銃声を聞いて駆けつけたジョナサンは、警察官を殴ったのです。ジョナサンはその場で逮捕。こうしてチルマークを震撼させた七面鳥事件は幕を降ろしました。リーダーを失った群れはやがて姿を消し、町は平和を取り戻しました。
野性に介入するということ
なぜ七面鳥たちは、人間を襲うようになったのでしょうか?
それは、人間が野生の七面鳥に餌を与えるからです。
そもそも七面鳥たちは人里なんかにやってきません。飢えていたからこそやって来るのです。そんな七面鳥たちに餌を与えれば、七面鳥たちは当然町に居着きます。そうやって何の気なしにやったことが、さらに多くの七面鳥たちをおびき寄せます。
七面鳥は縄張り意識の強い動物ですから、やがてその町の人間たちを敵と見なし、襲い始めます。こんなときにはどの人も逃げずに、徹底的と敵対したほうがよいのだそうです。野性の動物は序列に敏感ですから、人間のほうが序列が上だと認識すると、人間を襲ったりしないそうです。まして餌付けなんてもってのほかなのです。
ところがなんの知識も覚悟もなく中途半端な「動物愛護」をすると、トムのようなモンスターが生まれるわけです。野性のまま日常的に飢えた生活だったら、それほど巨大に育つこともなかったでしょう。
実はよくある話?
実はこれ、カタチは変れどよくある話なのかもしれません。たいした覚悟もなく若者に媚びる。隣国にペコペコする。近所の野良猫にむやみに餌をやる。やがて媚びられたほうは、それを当然と思い始めます。最初に媚びたほうは「親切にしてやったのに」と憤り、もう一方は「誰も頼んでないのにホイホイ持ち上げたのはそっちだろ?」となります。最大の被害者は、隣国であり、若者であり、野良猫かもしれません。
この事件の発端となったジョナサンとその妻は、その後七面鳥を撃ち殺した警察を強く非難。またこの七面鳥を埋葬したいから遺体を返してくれと請求を始めたのです。そもそも飼っていたわけですらないのに。無責任に餌を与えて街中を恐怖に陥れただけなのに。
あなたの周りにもいませんか? 野良猫やカラスに餌をあげるだけの人。甘やかすだけの子育てをする人。 可愛がる、大切にするということを、本質的にはき違えた人達が。
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