佐々木俊尚氏の『「当事者」の時代』を読んでみました。
472ページとスゴいボリュームなのだが、読み応えがあり、休日を潰して一生懸命読んでしまいました。
感想が多過ぎてどこから書いていいのか分からないぐらいなので、まずは前半の佐々木氏の新聞記者時代の話から書いてみようかと思います。
この本のメインテーマである「マイノリティ憑依」の舞台設定として、まずは佐々木氏の新聞記者時代の話が克明に描かれています。事件の取材やその裏取りの話が延々と続くのですが、色々な意味で既視感が強く、思わず「そうだそうだ」と頷いてしまう部分が沢山ありました。
特に毎日新聞社内のすさまじい競争の話はもうホントに頷くところが多くて、「アップルと同じじゃん」って何度も呟いてしまいましたw。例えばチームで取材に行ったのに、一人だけこっそりと編集局へ戻って自分のネタにしてしまう記者の話や、常に誰がライバルが注視して自分の社内の立ち位置を確認している人の話、後輩や部下のネタを自分の手柄にする人とか…。こういうのいたいた!って感じで、仕事や分野や国籍さえもが違っても、人間って自分の利益のためにはえげつないことするんだよな…、と変に納得してしまいました。
また警察から裏を取るために張り付く記者と警察との間に濃密なハイ・コンテクストな空間が形成される話なども非常に興味深く、共感するところが多かったです。
アップルも秘密主義で濃密なハイコンテクスト・カルチャーですが、そのマネージメントは更にその傾向が強く、影響力のある上級管理職の一言二言やちょっとした表情の変化を頭をひねって解釈したり、言われたことの深読みをしたりと懸命でした。管理職の面子はそんなにコロコロ変わりませんし、10年以上の知り合いも多かったですから、ああいう秘密主義のところで同じような面子でずっと一緒に働いていれば人種を越えて非言語的なコミュニケーションが芽生えていくのものなんだな、とこの辺も奇妙に納得。そこで働いている時にはまったく無自覚でしたが、文章にして読んでみると憶えのあることが沢山ありました。またハレとケのように公式のチャンネルでは建前通りとお約束のを顔をし、非公式のチャンネルについては存在しないかのような知らん顔と言うのもまったくそのままでした。時々部署の方針の発表などがありましたが、よく練られた公式のストーリーが語られ、質疑応答にも万全の準備で臨んでいました。下々にとっては公式発表が世界のすべてですが、これは本当に建前の世界です。
また私は長らく武道をやっていましたが、師範の考えることを先読みしてタバコに火を点けたり車を回したりと、こういうことは徹底的にやりましたし得意中の得意でした。こういうスキル、一概に悪いとも言えないような気もします。実社会に出ればこういう能力が長けていると上長の憶えも早いですし、そればっかりだとアホですが、まったく出来ないのもどうかも思います。
しかしその一方で、こういうハイコンテクストな空間のヤバさと言うのは、段々とそれだけが「世界のすべて」であるかのような奇妙な錯覚に陥ってくるところではないかと思いました。頭では別の世界があると分かっていても、そうした空間に慣れていくことでそれが世界のすべてであるような気分になってきます。また自分たちに酔ってしまう仲良しクラブも形成されやすいように思いますし、馴染めない者は次第にこの濃密な空気に押しつぶされていきます。日本は言語が1種類で、部活なども通年ですので学校時代からこういうハイコンテクストな空間が形成されやすいですし、社会に出てからも雇用が流動化していない分、どの会社でもこういったハイコンテクストな空間が非常に形成されやすい……というよりも形成されないことの方が稀な社会です。イジメなどのもこうしたところに大きな原因があるように思いました。
肝心のマイノリティ憑依については一言も書いていませんが、これはまた明日にでも書こうかと思います。本の内容が濃過ぎてひとつのエントリーに収まりません。
PS:後編を書きました。こちらです。
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