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Brighture English Academy 代表。趣味はウクレレとかハイキングとかDIYとか旅行などなど。在米20年。シリコンバレーに住みつつ、日本とアメリカとフィリピンで会社経営しています。最近は英語教育がライフワークになりつつある。

2011年1月11日火曜日

社会的階級と慈悲深さは反比例する

2010年も終わりに差し迫った頃、journal Psychological Science という心理学の専門誌に、興味深い論文が掲載されました。

UC Berkeley のDacher Keltner氏とトロント大学の Stéphane Côté によるとですね、社会的階級が高い人(高学歴/高収入/高い社会的地位の人)は、社会的階級が低い人(低学歴/低収入/低い社会的地位の人)よりも他人の感情を読み取るのがヘタだと言うのです。

この研究者は実験の対象者を大学卒またはそれ以上の学歴と人と、高卒の学歴の人に分けたそうです。そして被験者にたくさんの顔写真を見せ、顔写真の人々がどのような感情の状態にあるのか読み取ってもらう実験をしました。

そうしたところ、学歴の高い被験者のほうが学歴の低い被験者に比べ、写真の中の人の感情を正確に読み取ることが出来なかったそうです。また自分の社会的階層の高いと感じている人ほど、読み取るのがヘタだったそうです。

問題は「誰と比較するか」らしい

ところが現実には社会的階層の高い所にいる人達に、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなどの世界的な億万長者と比較して自分たちの社会的階層がどの辺に位置するのか考えてもらった上で、前述の実験をしたところ、表情を読み取る力が上がったそうです。

逆に現実には社会的階層の低い所にいる人達に、ホームレスなどの階級の底辺にいる人達と比較して自分たちの社会的階層がどの辺に位置するのか考えてもらった上で、前述の実験をしたところ、表情を読み取る力が下がったそうです。

つまりね、人間なんて他人に比べて自分がどの辺に位置するかってだけで、人に対する思いやりの量が増減してしまう、ってわけです。

またなんだか寒くなるような話ですが、人の表情を読み取る力だけではなく、チャリティなどに寄付する額も、額面だけみると金持ちの方が沢山寄付しているような印象を受けますが、年収に対するパーセンテージでみると、低所得者の方が高い割合で寄付をしているそうです。

それからボランティアの参加率なども、社会的階層の高い所にいる人達のほうが、低い所にいる人達よりも低いそうです。

どうしてこんなことになるのか?

なぜこんなことになってしまうのか、いくつかの仮説が考えられています。

1. 社会的階層の高い所にいる人達は、自分が得た財産/地位等を失いたくないため、競争相手を作らないよう、自分たちより下に位置する人達に冷たくあたる。

2. 社会的階層の高い所にいる人達は、その地位や財産を維持するためにも大勢の人を解雇したりする機会が多いため、自分の精神状態を守るために、他人への思いやりを減らして対応している。

3. 社会的階層の高い所にいる人達はお金が潤沢にあるため、人に頼らなくても自分で色々なことをケアできてしまう。そのため人の表情を読み取る必要性がない。

4. 対する社会的階層の低い所にいる人達は、お金がないため、他人に頼る機会が必然的に多くなる。そのため正確に他人の表情を読み取る必要が生じる。

5. また社会的階層の低い所にいる人達は、しばしば他人の助けを借りて生活しているため、「困った時はお互い様」と他人に手を貸したり、ボランティアに参加したり寄付をしたりすることが増える。


... さらにですね、この社会的地位の高低の差って、実は兄弟間などでもみられるそうです。長男長女は得てして他人への協力を惜しむ傾向にあり、また場の空気を読んだり、他人の感情を読むのが苦手だそうです。対する末っ子はこうした能力に長けています。これも前述の例とほとんど同じで、長男長女は最初親の愛情を一身に受けるものの、兄弟の出現により100%受けていた愛情がドンドン減ってしまうわけです。ですので下の兄弟に親切にしたって得ることはないどころか、競争相手を強力にしているってわけです。逆に下の子は上手く他の兄弟に取り入っていくしかないわけで、おのずとこうした能力が高くなるのでしょう。

白人の特権意識も似たような感情?

アメリカでは既得権者であり、社会的階級も高い白人の人達が沢山います。この人達、メキシコ辺りから不法滞在者が大嫌いで、排斥運動なんぞをしたり、サラ・ペイリンあたりを持ち上げてティーパーティなんていう頭の悪い運動をやっていますが、これもまあ同じようなメンタリティなんでしょう。

しかしなんか救いがないですね。うちの兄は長男で金持ちなんですがねえ... きっとこのブログ読むでしょうねえ。

気を悪くしたらごめんなさい。先に謝っときます。

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2 件のコメント:

吟 さんのコメント...

>つまりね、人間なんて他人に比べて自分がどの辺に位置するかってだけで、人に対する思いやりの量が増減してしまう、ってわけです。

うむむむむむ。
人間関係の相対性理論ってかんじで、思わず唸ってしまうです。

>長男長女は得てして他人への協力を惜しむ傾向にあり、また場の空気を読んだり、他人の感情を読むのが苦手だそうです。

これはビンゴですね。そんなオレはまさに長男。

まつひろ / Matsuhiro さんのコメント...

吟さん、
コメントありがとうございます。

まったく面白いですよねえ... 私、ここ2年で収入が劇的に下がったの、このオリジナルの論文を読んだ時には「うんだうんだ」と思わず頷いてしまいました。

その一方で「貧すれば鈍する」なんてことわざもありますから、「貧しいと心優しい」、と安易に考えるのもどうかな、っと。この学者にもっとスゴい貧しい人の調査もしてもらいたいです。