2016年12月2日金曜日

アメリカがポリコレと共に投げ捨てたもの

ドナルド・トランプ氏が選挙運動中にこき下ろしたポリコレこと「ポリティカル・コレクトネス」、選挙直後には日本でもずいぶん話題になったようです。「ポリコレ棒」なんて言う言葉まで飛び出して、ネット上で随分熱く議論されていました。

日本で繰り広げられたポリコレ議論は、主に「言葉の使い方」に終始していたように見受けられますが、実はアメリカにおけるポリコレは、表現の問題だけにのみならず、例えば会社や学校の政府の方針や政策など、ありとあらゆるところに深く及んでいるある種の、思想、あるいは価値観のようなものなのです。

そしてこのポリコレは、ここ数十年のアメリカの繁栄に大きく関与してきました。

求人面接で訊いてはいけないこと

例えば日本では「35歳未満の男性を募集中!」などと言った求人広告を目にしますが、これ、アメリカだったら完全にNGです。理由は簡単、年齢差別だからです。同様に「未婚女性のみ募集」もダメですし、「白人男性のみ募集」もダメです。「キリスト教徒のみ募集」とかもダメです。

しかし、「プログラミングの経験が5年以上ある方」ならば全然オッケーです。「公認会計士の資格を持ち、実務経験が3年以上の方」とかね。こういうのは全く構いません。これが「政治的な正しさ」というわけなのです。

さて、実際にこういう公正中立な広告を出して、応募がワンサカ来たとしましょう。アメリカの標準的なレジメには、志望動機、学歴、そして実務経験以外には余計なことが書いてありません。顔写真も添付されていませんし、生年月日や性別や未婚か既婚かさえも記載されていないのが普通です。ですから面接の当日まで、どんな人が来るのか皆目見当がつかないことも多々あります。

目の前に現れる候補者は黒人かもしれませんし、白人かもしれません。あるいはアジア系かも知れないし、ラテン系かも知れません。更に、未婚の方かもしれませんし、結婚していて3人子持ちの方かもしれません。イスラム教の信者かもしれませんし、仏教とかもしれません。

そして面接の場で、特に気を使わなければならいないのが「ポリコレ」なのです。

例えば、残業や休日出勤が可能なのか訊きたいとします。その際にはストレートに、「忙しい時には残業や休日出勤がかなり発生しますが、出勤可能ですか?」と尋ねればよいのです。間違っても、「お子さんはいますか?お迎えに早く帰る必要はありますか?」などと訊いてはいけません。お子さんを迎えに行くか、託児所に預ける時間を伸ばすのかは候補者の個人的な問題だからです。

あるいは募集している仕事が体力的にかなりきつい仕事だとします。応募者はどう見ても自分の父親ほどの年齢で、雇う側としては思わず「失礼ですが、お年はお幾つですか?」などと訊きたくなるところです。しかし、これもNGです。こういう場合には「この仕事は荷物の搬入がメインで、非常に重いものを頻繁に運ぶ必要があります。体力的に問題ありませんか?」などと言ったふうに尋ねればよいのです。

面接の場で聞いていいのは、あくまで職務への適性に直接関係ある質問だけです。信条も、宗教も、年齢も、結婚の有無も候補者のパフォーマンスとは関係ありません。唯一の例外は、例えば「身長180センチ以上の男性モデル募集」などのように、仕事の内容が特定の性や身体的な特徴を必要条件とする場合のみです。面接でうっかり子供の有無などを尋ね、就職差別で訴えられた企業も少なくありません。

ポリコレがもたらした世界

こうして80年代に萌芽したポリティカル・コレクトネスは、年を追うことに普遍的な価値観としてアメリカの文化に組み込まれて行ったのです。その結果、アメリカという国は外国人やマイノリティにとって非常に働きやすい場所になりました。特に思い切り左に振れているシリコンバレーなどはその典型でしょう。

そしてこの地には、全米、いや、世界中から優秀な人材がなだれ込んできたのです。

過去20年間にシリコンバレーで起業した全ベンチャー企業の半数以上は、移民が創業者になっていると言われています。グーグルのセルゲイ・ブリンは旧ソビエト、ホットメールのサビア・バティアはインド、ヤフーのジェリー・ヤンは台湾、イーベイのピエール・オミダイアはフランス、テスラのイーロン・マスクは南アフリカ生まれと、例をあげればきりがありません。

下はアップルの多様性に関するビデオ。アップルに限らず、シリコンバレーの企業はどこもこのような感じです。



そう、ポリティカル・コレクトネスはやっぱり大切なのです。

ポリコレ瓦解を喜ぶ人たち

ところが今回トランプはこのポリティカル・コレクトネスをこき下ろし、窓から投げ捨ててしまいました。これを見て、今までポリコレのせいで割りを食っていた(と感じてる)人たちは大喜びです。しかし結局のところ、ポリコレ放棄はアメリカに弱体化しかもたらさないでしょう。出目や肌の色や信条で差別されるところでわざわざビジネスを始めたり、就職したりするメリットなど何もないからです。



現にシリコンバレーに住む私の友人たちの中にも、黙って荷物をまとめる人たちが出てきました。911の直後にアメリカ中で外国人排斥熱が高まった時にも随分多くのエンジニアたちが黙って静かに出身国へと帰って行きましたが、今回も同じことが更に大きな規模で起きるのではないかと思います。

自由、平等と言った価値観を大切にしない国に、魅力的な人材は集まりません。逆に言えば、今ここでそうした価値観にしっかりと踏みとどまることができる国は、優秀な企業や人材を集めることができる可能性が大きく高まるのではないでしょうか?



「本気で英語を学ぶ人」のためだけのイングリッシュアカデミー、それがブライチャーです。「英語を本気でモノにしたい」そんなあなたの前向きな姿勢に、ブライチャーは本気でお応えします。

2016年11月13日日曜日

トランプ後の世界は、戦争が待っている?

ドナルド・トランプがアメリカの大統領に選ばれた。

 まさかトランプが選ばれるはずがないと思っていた人が多かっただけに、アメリカでも日本でもショックを受けている人が多い。マスコミも一般の人々も「なぜトランプが選ばれたのか?」を分析するのに大忙しだ。

 白人の逆襲? グローバル化の煽りを食っていた人たちが声をあげた? 女性への偏見? 原因はいろいろ言われているし、どれも一理ある。

僕はこう思う。

トランプ氏の当選は、「時代の要請」なのだ。




時代は「右向け右!」「俺たちは何も悪くない!あいつらが悪い。あいつらのせいだ!」とわかりやすいことを声高に叫んでくれる、強権的なリーダーを求めている。 今の時代、誰しもが不安を抱えて生きている。その原因は急激なグローバル化とITの発達にある。でも、変化があまりにも大きすぎて、考えるのが追いつかないのだ。いったい何が起きているのか、よくわからない人も沢山いるだろう。そうこうしている間に、仕事が自動化されたり、需要そのものがなくなって消えてしまったり、海外にドンドンと出ていってしまった。残った仕事はハンバーガーをひっくり返すような低賃金の仕事か、高等教育を受けたエリートにしかできない高度な技能が要求される仕事ばかりで、普通の人の仕事は減る一方なのだ。普通の人々の給与は据え置かれたまま、時間がだけが流れていく。

そんな折、 8年前に頭の良さそうな黒人男性がさっそうと登場し、”Yes, We Can!” と変化を訴えた。みんな彼に賭けてみたのだ。でも、オバマ大統領に出来たことといえば、健康保険制度の改革と、不況からの脱出くらいだった。雇用はずいぶん増えたが、まっとうな暮らしを営めるような、安定収入を得られる仕事はアメリカの真ん中あたりにはやってこなかったのだ。この辺りの事情はアメリカもイギリスも、そして日本も大して変わらない。

だから、時代はさらなる変化を求めている。 そこで起きたのがイギリスのEU脱退や、フィリピンのドゥテルテ大統領選出や、トランプ大統領の選出なのだ。来年のフランスの大統領選でも、移民排斥を主張する極右のルペンに成る公算が高い。

次はなんだろう?

中国の習近平主席、フィリピンのドゥテルテ大統領、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、ハンガリーのビクトル首相、インドのモディ首相、北朝鮮の金正恩総書記、そして日本の安倍首相……そしてトランプが加わった。いつの間にずいぶん沢山の強権的なリーダーたちが誕生している。さらに増えていってもまったく不思議ではない。’

 かつて、同じようなことが世界大恐慌の後に起きた。経済が後退し、人々は強権的なリーダーと、わかりやすいスケープゴートを求めた。アメリカでは黄禍論が唱えられ、ドイツではユダヤ人が標的となった。各国で民族の自決が叫ばれた。やがて第2次世界大戦が始まったのだ。

 もしかしたら、2007年に端を発したリーマンショックが、同じような状況を作り出したのかもしれない。イギリスやフランスの移民排斥、日本の嫌韓、アメリカのメキシコ人やモスリムへのバッシングや移民の排斥。イギリスのことはイギリス人が決める。そうやって決まったEU脱退は、民族自決そのものだ。そして世界各地で出現する強権的なリーダー。この先に待っているのはいったいなんだろうか?

アメリカが内側を向くと..

トランプの大統領就任後、世界はいったいどちらに振れていくのだろうか? 数ヶ月前にフィリピンのドゥテルテ大統領がアメリカに暴言を吐いて中国にすり寄ったが、驚いたことにオバマはこれに無関心を決め込んでしまった。

 ではトランプが率いるアメリカがさらに内向きなったらどうなるのだろうか? 今はアメリカになびいているアジアの国々が、中国への恭順の姿勢を示すかもしれない。そうしたら、中国もさらに大胆な行動をとるようになるだろう。自衛隊と中国軍の間で、交戦が起きたとしてもまったくおかしくない。すると日本の世論だって、急激に核武装容認に走るかもしれないのだ。

 あるいはヨーロッパはどうだろうか?  米軍がNATOへの関与を大幅に減らしたら、ロシアはどう出るだろうか?   アメリカは中東にどう関わっていくのだろうか? こう考えると火種はいくつもある。これらのどれか、あるいは全てが大規模戦争に発展しても不思議ではないだろう。

言論はどうなるだろう?

 かつて911の頃、アメリカは一度大きく右に揺れた。そして、そして愛国法なるものが制定され、メールの盗み読みや、電話の盗聴なのがまるで当然のように行われた。カリフォルニアのオークランドでは、初老の男性が与太話でブッシュのことを「ケツの穴」と侮蔑したところ、後日FBI から事情徴収を受けた、というまったく笑えない話がある。

 つまり、実際にきな臭くなれば、言論の自由などあっという間になくなる。真剣に国を憂う知識人がみんな投獄される、といったことだってアメリカでも十分に起こりうるのだ。強い流れがある方向にできてしまうと、これを止めるのは非常に難しいのだ。

足元を見る

こうした事態を防ぐために僕たちがしなければならないこと、それはおそらく「簡単な解決方法を求めない」というあたりにある。現実と折り合いをつけながら、具体的な解決方法を考えていくしかないのだ。グローバル化はもう嫌だと、内にこもっても別に何も解決しない。メキシコ人が悪い、移民が悪い、モスリムは出て行けと悪者探しをしても、憂さ晴らしにはなっても根本解決にはならないのだ。

 格安スマートフォンが100ドルちょっとで買えるのはグローバル化のお陰なのだし、日本が海外から安定して食料やエネルギーを輸入できるのだって同じことだ。スマートフォンを国内生産して1台数千ドルで販売しても、買える人などいないやしない。それはユニクロのやギャップの服だって同じことだ。だから、グローバル化やIT化をむやみに悪者扱いするのも芸がないし、かといって何でもかんでもグローバル化とITの活用で解決できると信じ込むのも同じくらい芸がない。

 先進国の人々は、どうすれば国内の仕事を増やすことができるか、誰しもがより高度な教育を平等に受けることができるようになるにはどうすればいいのか、もっと真剣に考え、自らの手で形にしていくしかないのだ。

 万能の解決策はない。自分たちの足元をよく見て、誰かを悪者扱いするのでもなく、強権的なリーダーの出現を待つのでもなく、現実を直視し、自らの頭で考え、根気よく話し合いながら、国内に仕事や効果的な教育の場を生み出していく。僕らにやれることはそれしかないのだ。そしてそれこそが、僕らが戦争を避けるために取ることのできる、最も効果的なアクションなのではないだろうか?



「本気で英語を学ぶ人」のためだけのイングリッシュアカデミー、それがブライチャーです。「英語を本気でモノにしたい」そんなあなたの前向きな姿勢に、ブライチャーは本気でお応えします。

2016年11月7日月曜日

アメリカ大統領選に仕掛けられた「巧妙な罠」?

いよいよアメリカの大統領選が明日へと迫って来た。

選挙戦はありえないほどの接戦となり、どちらの候補者が勝ってもまったく不思議ではない状況にある。

僕ら日本人からしてみると、一体なぜインチキの塊みたいなトランプ氏がここまで支持されるのか意味がわからない。それは日本人に限った話だけではなく、同じアメリカ人であっても、国の半分を占める反トランプ派からしてみても同じ話で、彼がなぜ支持されているのか皆目見当もつかないような状況なのだ。

日本ではトランプ氏の支持者は低所得の白人層だけ、と言った感じで報道されていたようだが、それがどうして案外そうでもないのだ。そこそこ高学歴で高収入の学校の先生や中小企業の経営者といった人々に至るまで、幅広い層の人々が彼を支持している。僕のフェイスブック上でつながっているアメリカ人の友人たちも、少なからずトランプ支持を表明している。

一体、なぜトランプ氏はここまでの支持を得ているのだろうか?

「システム」への不信感


トランプ支持者は確かに低所得の白人が多いとは思う。また、極端に男性に偏っているのももう一つの特徴だろう。しかし、そうは言いつつ女性もいるし、高所得者の人々も確かにいるのだ。

では、一体何が彼らをトランプ支持へと駆り立てるのだろうか? トランプ支持者が共有している思いとは、一体なんなのだろうか?

僕が思うに、それは今のアメリカを回している「システム」への不信感なのだ。企業や政治家が結託し、庶民のことなんかお構いなしで、大企業が儲けることだけを最優先するシステム。そんな「システム」に人々は辟易とし、大きな不信感を抱いている。

現代アメリカは、医療にも教育にも恐ろしく金がかかる。かといって儲かる仕事はあまりない。工場労働もコールセンター業務も、海外に出ていってしまった。残っているのはファーストフードのパートばかりなのだ。だから庶民の財布は常にすっからかんだ。でも、大企業が危機に直面すると、直ちに税金が投入される。「システム」そのものは常に温存されていくのだ。リーマンショックしかり、重油流出しかり。

そんな「システム」に対する不信感がマグマのように溜まった人々の前に、さっそうと(?)現れたのがトランプ氏なのだ。

危険人物だからこそ魅力的?


実はトランプ支持者だって、彼の言うことが全て実現できるなんて思っちゃいないだろう。メキシコとの間に壁を作るのも、イスラム教徒を締め出すのも現実として得策でもなければ、実現可能ですらない。

しかし、トランプ氏ならば、このシステムを中から破壊するだけのパワーがあるのではないのか?と夢を持たせてくれるのだ。

だから、提案の実現性などどうでもよい。いやむしろ、実現性など一切無視して、歯切れのいいことを叫べば叫ぶほど支持が高まっていくのだ。トランプ氏に期待されていること、それはシステムの破壊なのだから、当然のことだろう。

彼の過去の無茶苦茶な行動が明るみに出ても、それはマイナスに作用しない。むしろ「何かやらかしてくれるのではないか?」と言う期待値を盛り上げてしまうのだ。

一方のヒラリー氏はと言うと、つまりはこの「システム」の中の人だと思われてしまっている。だから実際に庶民のためになる現実的な政策を唱えているにもかかわらず、嘘くさいと思われてしまう。そして、一流大学卒、弁護士、政治家、国務長官といった彼女の華々しい経歴さえもが、むしろマイナスに作用してしまうのだ。

そしてアメリカは分断された


この選挙戦を通じてアメリカはすっかり分断されてしまった。そしてこの分断は、オバマ氏が当選した時から始まったように思う。マイノリティ対白人という構図は確かにあるが、「システム温存派」対「システム不信派」というような捉え方をすることができるのかもしれない。そしてこの分断は、大統領選が終わった後もずっと残るだろう。

しかし、である。

ひょっとしたらこのトランプ氏対ヒラリー氏の対決は、そもそもまったくの茶番なのかもしれないと思ったりもする。

そう。アメリカを分断するための巧妙な罠なのではないのだろうか?

アメリカ人がみんなで結託して、富が平等に分配されるよう、あるいは医療費や教育費が下がるように運動でもされたら、困ってしまうのは「システム」そのものなのだ。しかし、対立軸を作って分断させ、お互いをいがみあわせておけば、庶民たちの不満が大きな流れとなり、この「システム」を司る為政者たちに向かうことはない。

仮にトランプ氏が選ばれたとしても、彼自身がそもそもシステムの中の住人なのだから、それを本気で壊すことなどあり得ない。ヒラリー氏が選ばれても同じことだろう。そもそもクリントン夫妻とトランプ夫妻は仲の良い友人同士だとの話もある。




こうしてアメリカ人たちは「分割して統治」され続けていくだろう。




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